#007 アナリストの役割③ -12チーム中最下位争いから決勝へ(続きの続き)-

大まかな相手の特徴を抑えた後は、オフェンスやディフェンスの傾向から対策を講じます(戦術立案)

 大まかな特徴をとらえた後はいよいよ戦術面の確認をします。ここで注意すべき点は前回同様事実に基づいて戦術面を確認していくことです。特に同一シーズン内で対戦経験のある相手や練習試合をよくする相手校など印象やイメージが選手の中にある場合は、そうした印象論はまず片隅に置いておきます。”直近ではこうです”という説明をしてから、選手同士で前回試合をした時のイメージなどを共有してもいいかもしれません(あるいは先に選手のイメージを共有してから直近の傾向を見てもいいかもしれませんね)。また相手の攻撃にすべて対応することは難しく、自チームのすべての攻撃を得点にすることは難しいというよりバレーボールの競技特性上限らなく不可能に近いです。

 こちらでは相手の攻撃パターンを簡易的に示しています。右下の図の中の緑色の矢印がアウトサイドヒッター(OH)、赤色がミドルブロッカー(MB)、青色がオポジット(OP / RS)です。矢印の大きさは得点力を視覚化したものです。このスライドページを簡単に整理すると、

 ・ヒューストン大学はBクイック(3s)をベースに攻撃パターンを組んでいる

 ・OHは時間差攻撃で中に切り込んでくるか、レフトサイドの2ndテンポで攻撃している

 ・OP / RSは一度コート中央に寄ってからアプローチを開始してスライド(片足のブロード)攻撃をしている

 ・レセプションからのセッター(S)の配球はあまり偏りがなく、均等にセット(トス)している

となります。

 矢印(”⇒”)はそれらに対する自チームの対応を示しています。対策の基本指針は、

 ・MBのBクイックを軸としたOHの時間差やOP / RSのスライドは、彼らのレセプション(サーブレシーブ)の良さに依存している(ここでもサーブの重要性を強調しています)

 ・シー&レスポンス(相手のパスの返球位置や助走の状態を見てから反応すること)を徹底しよう

となります。

 次の項目は相手のアウトオブシステム(OOS)、つまり相手のパスが乱れ上記の攻撃パターンが使えなくなった状況について説明しています。

 ・ヒューストン大学のOOSのアタック効果率(EFF%)は4%と非常に低い

 ・相手レフトサイドからの攻撃に絞られる状況をつくるために、サーブで攻め、相手のセッターに一本目のボールを触らせよう

 最後の項目は相手セッターのツーアタックについてです。

 ・ヒューストン大学のセッター18番はツーアタックが多いので積極的にブロックをしかけ、フロアのディフェンダーも常に警戒しよう

右下の図形内の項目は、

 ①相手MBのBクイックに対しては自チームのMBとOP / RSもしくはセッターの二人でブロックをし、クロス(angle)方向にいるリベロの方に打たせるようしよう

 ②相手OHの時間差のセミクイックも自チームのMBとOP / RSもしくはセッターの二人でブロックをし、クロス(angle)方向にいるリベロの方に打たせるようしよう

 ③相手OP / RSのスライドには基本的に自チームのOH一人でブロックし、ブロックするときは初めにストレート(line)に位置取りそこからクロス方向を止めに行こう

 ・その際は自チームのMBがフェイント(tip)処理を担当しよう

 となっています。

最も得点数の多い攻撃パターンに絞ったり、自チームがやられがちな攻撃パターンに注意して

 相手のオフェンスに対する自チームのディフェンス戦術を構築する際はできるだけシンプルにして、試合の中で出現する確率の高いモノに集中できるようにしましょう。繰り返しになりますが、相手のすべての攻撃に対して完璧に対応することは非常に難しく、中途半端になってしまうことを避けるためです。

 ヒューストン大学へのディフェンス戦術をまとめると、

 ・相手はレセプション(サーブレシーブ)がよく、Bクイックを起点とした時間差やスライドを多用してくるのでまずはサーブでOOSの状況をたくさんつくる

 ・インシステムではBクイックと時間差あるいはレフトサイドの2ndテンポに自チームのMBとOP / RSもしくはSの二人でブロックし、クロス方向にスパイクを打たせるように位置取りをし、スライドに対しては自チームのOH一人で対応し、MB陣はフェイント処理を徹底する

 ・相手S前衛時のツーアタックは常に警戒する(Bクイックとレフトサイドに対してのブロックは変わらず自チームのMBとOP / RSもしくはS)

となります。

次回は、

 次回はサーブの狙い方や相手のディフェンス面の特徴を見て、自チームのオフェンス戦術を見ていきましょう。

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