#13 専任ではなく公認、アナリストの新しい形とビジネスモデル

アナリストを副業として継続できる社会を創りたい

 現在バレーボールにおけるアナリストの一般的な生涯モデルとしては、①学生時代、おもに大学時代からアナリストを始め、②大学チームの繋がりなどからVリーグ所属のチームのお手伝いをし、③そこから卒業後にVリーグチームに入団するというケースが多く、日本代表や私のように海外で活動したりする場合もあるものの、ほとんどのアナリストがどこかのチームに専任という形で所属しています。学生時代にアナリストのノウハウを学び、実際に4年間をアナリストとして活動した学生の中には卒業後にそのノウハウを活かす場がないというのが現状ではないでしょうか?

 アナリストが活躍できる場がVリーグチームでの専任業務しか存在しないとなると、大学等を卒業した後にその技術を生かせる場がなく、せっかく身につけたものを野放しにしてしまうのは非常にもったいないなと思います。また大学の一部の試合やVリーグの試合を除いた多くの試合においてデータの出入力がなされず、記憶の風化とともに忘れられていく試合がどれだけあるでしょうか。Vリーグチームに専任で、とはいかないまでもアナリストの技術を生かす場がそこに眠っているのではないかと私は考えています。

 大学などを卒業後、一定のスキルを持ったアナリストを「公認アナリスト」として認定し、単発のデータ入力作業に対して一定の報酬を支払うことができるシステムができれば、ブログや動画編集、ウェブデザイン、ハンドメイド、せどりなどのように副業としてのスカウティング業務が成立するのではないかと考えています。ビーチバレーやスノーバレーボールのようにチームではなく、個人やペアなどチームよりも小さい単位で活動している選手にとっては、コーチのほかにスタッフを雇うのは難しく、といっても自分で試合映像を編集したりするのはたいへんという場合、単発で試合映像をスカウティングしてくれるスポットのアナリストがいればWin-Winの関係が作れるのではないでしょうか。

 YouTubeやその他SNSでトップ選手の映像を見ることができる世界において、今後は中学校や高校カテゴリーでも、自分のプレーを自分で見て分析する自己分析力の向上が重要になってくることでしょう。他人の優れたプレーを見ることは容易な世の中で、後は自分が試合の中でどのような動きをしているのか、見たいプレーだけを繰り返し見て修正していくという作業ができれば技術力やチーム力の向上に大いに役立つことでしょう。そんな時にも、1試合ごとに公認アナリストにデータ入力をお願いして、その分、自己分析の時間に充てるということができればそこでもWin-Winの関係が作れるのではないでしょうか。

公認アナリストと相性がいい、Vlabo

 前回ご紹介した映像分析支援アプリのVlaboと前述の公認アナリストの存在は相性がいいと思います。工程としては①試合映像を依頼人(チーム)が撮影する、②映像をギガファイル便などで公認アナリストに送る、③公認アナリストがそれをスカウティングする、④データ入力後のスカウティングファイル(dvwファイル)と映像ファイル(mp4ファイル)をギガファイル便で依頼人に返送する、⑤依頼人自ら、スカウティングファイルと映像ファイルをパソコン上(iTunes内)でiPadやiPhoneのVlaboアプリ内に移して完了、となります。

 公認アナリストに支払われる単価は試合時間や総ラリー数によって変動があるものと考えられますが、時給が2,000円を超えるようになればいいなと個人的には思います。ビーチバレーのような21点、3セットマッチ(3セット目は15点)の試合であれば1試合の入力にかかる試合は1時間程度なので2,000~3,000円といった具合でしょうか。6人制の5セットマッチの試合のフルセットの試合ともなれば入力に2時間から3時間ほどかかる場合があるので最大で6,000円程度といった具合ですね。6人制の場合、少なくともコートに6人ないし7人の選手が出場しているので出場選手で割ると一人当たり1,000円程度の負担ということになりますので、けっして高い金額ではないのではないでしょうか。

すべての試合をデータ入力することが当たり前の世界に

 このような具合で、専任のアナリストがいない場合でも、重要な試合などが公認アナリストによってデータ入力されるようになると、少しずつデータが定量化されるようになります。例えばコロナ禍においても毎日の感染者数などが定量的に示されることで、(その賛否はともかくとして)それに基づいて必要な感染対策が講じられています。バレーボールにおいても各年代、各カテゴリーでデータが定量的に蓄積されることで、例えば小学生のトップチームの決定率やサーブ効果率の水準はどの程度か、中学生ではどの程度か、高校ではどうか、あるいはトップ層との差はどんなところにあるのか、ということが見える化(視覚化)され、最終的にはバレーボール界全体に波及効果をもたらしてくれるのではないかと思います。

英語とデータを備えて万全、フルスカラーシップでアメリカ留学

 アメリカにいる頃によく現地のコーチ陣から日本からアメリカに留学したい高校生はいないかと尋ねられることがありました。私の知人にはそうした高校生がいなかったので直接紹介などはできませんでしたが、YouTubeなどから高校生の試合映像をコーチ陣に見せると非常に興味深く食いついてくれました。しかしながらほとんど多くの日本の高校生は英語が話せないと説明すると残念そうにし、それでもと興味を持ってくれた選手のスタッツ(統計データ)が見たいと求められることがありましたが、日本の高校生年代で試合後のスタッツがインターネット上から検索できることはほとんどなく、日本の高校生のトップレベルの選手がどういうゲーム構造(ポジション別の得点割合、スキル別の得点割合、平均的なスパイク決定率など)の中でプレーしているのか説明できないということがありました。アメリカではHudlのようなパフォーマンス分析を専門とする会社が多くのジュニア年代の選手のデータを収集しており、シーズンごとの選手個人のスタッツやハイライト映像が共有されています。

Hudlの選手ページの見本:試合ごと、スキルごとなど様々なハイライト映像が選手一人一人に作成されている

 裏を返せば、英語とデータを備えていればアメリカで大学4年間をフルスカラーシップ(全額支給奨学金)で留学することができる可能性のある日本の高校生がたくさんいるということです。それほど日本人選手の多くが身につけている「丁寧なプレー」というのは、アメリカでは評価されるポイントであるということです。定量的な情報収集を担う人材(アナリスト)を育成できるような仕組みを作ることで、日本の高校生がその後、海外で活躍する選手になることにも繋がるかもしれません。

今はまだ夢物語、それでも一歩ずつ未来に繋げていきたい

 アナリスト育成を主目的としたオンラインサロン「Thumbs Up Smileのバレーボール大学(仮)」開設に向けて動いています。アナリストを導入したいけど何から始めればわからないという大学・高校(あるいは中学校などどんなカテゴリーでも)チームの関係者の方やとにかくアナリストをやってみたいという方がいらっしゃればお気軽にDM等メッセージいただければ幸いです。まずはオンラインサロンや5月から始まる「ゆめのたね放送局」でのラジオ放送、ブログ、3月から再開予定のYouTubeチャンネル「Thumbs Up Smlie」を軸に、夢の実現に向けて一歩ずつ進んでいきたいと思います。

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