#002 Vリーグの再編計画(新リーグ構想)と私の描く日本バレーボール界における「天下三分の計」①

Vリーグの再編計画について

 昨年10月頃にV機構からこれまでのVリーグを再編してプロ化も視野に入れた新たなリーグをつくることが発表されました(https://news.yahoo.co.jp/articles/a36d18c01e9b8139f01d867b3ff71c76aac8db1b)。2024-25年シーズンからのスタートを目指す新しいVリーグについて早くもSNS上では多くの議論を呼んでいます。日本バレーボール界におけるプロリーグ創設やVリーグのプロ化については1994年にVリーグが発足する前から議論がなされてきました。初期のプロ化構想については、1991年に誕生したサッカーの「Jリーグ」に端を発し、当時の日本バレーボール界のトップリーグである「日本リーグ」をプロ化しようというものでしたが、その当時、前例の少ないプロリーグへのかじ取りについては時期尚早、と様子を見たのが現在の「Vリーグ」でしょう。ひたすらに様子を見た結果、当時日本ではそれほどまで人気ではなかったサッカーのJリーグがプロ野球に肩を並べる勢いで成長していくのを見送り、そして最近ではバスケットボールに追い抜かれていくのを黙ってみている、という状況といっても過言ではないかと思います。

アメリカにおけるバレーボール、バスケットボールの競技人口(女子スポーツ)について

 アメリカでは近年、女子スポーツにおいてそれまで一番競技人口の多かったバスケットボールをバレーボールが追い抜き逆転したという話を聞きました。高校まではバスケットボールとバレーボールの両方をプレーしていたという選手も、大学進学を機にバレーボールに専念することにしたという選手が多く、アメリカのチャンピオンシップの最終戦の前に行われる年間表彰のセレモニーでも、インタビュアーの方が大学のトップ選手たちにインタビューをする中で「どうしてバレーボールとバスケットボールでバレーボールを選んだの?あなたは高校時代どちらのスポーツでもトップレベルだったわ!」と聞くと、「もちろん」と前置きをしたうえでその選手は「I hate contact(私はコンタクト:接触が嫌いだからよ)!」といって笑いを取っていたのが印象的でした。これはその場にいた出席者たちとの会話の中での話ですが、アメリカでは全体の生活水準が上がってきたことで、ストリートでもできるバスケットボールよりも室内競技としてのバレーボールが人気になってきたのだということでした。

チャンピオンシップファイナル前夜祭のセレモニーでの一幕:「もちろん、私はコンタクトが嫌いだからよ!」といって場内を笑いに包む大学トップ選手

一大ビジネス産業となったアメリカのジュニアバレーボール

 アメリカのジュニアスポーツにおけるバレーボールは完全に商業化されており、日本のようにボランティアで指導をするコーチはほとんど存在しません。基本的には体育館というスペースがなければプレーすることができないため、クラブチームチーム単位での活動が中心です。日本の高校の部活動にあたるチームは一年のうちのほんの2,3か月ほどであり、本格的に協議に取り組むには地域のクラブチームに通います。一つのクラブチームにはU-12頃から各年齢で分かれており、U-17(もしくは18)までのカテゴリーとエリートチーム、ゴールドチーム、シルバーチームといったようにレベル分けされたチームに分かれています。ビッグクラブになると各年齢ごとに10チームほどチームが存在します。アメリカのクラブチームの多くは1チーム12~14人前後で構成されています。これは全ての選手が試合に出る機会を得るためだと聞きました。

 どうしてもトップチームでやりたいという選手が20人以上いたとしても試合で全員が出場して活躍する場を確保するため*にトライアウトで人数を絞り、トップチームの選考に漏れてしまった選手はそのチームのセカンドチームに入るか、別のクラブのトップチームに入るためにクラブを移動するかという選択に迫られます。なお、アメリカのジュニア世代のクラブチームでは年会費が日本円で40~80万円程度(現在の為替レートではもう少し割高かもしれません)というのが相場であり、そこからさらに全米各地の遠征では別途費用がかかります。年会費のほとんどはクラブの運営費であり、体育館のレンタル料や維持費、設備費と、コーチやその他スタッフのための人件費です。先ほどのビッグクラブを例にとると、14人×10チーム×6学年(U-12~U18)×80万円=6億7,200万円という年会費収入が得られる計算になります。こうしたアンダーカテゴリー組織を持つVリーグのチームがあればこれだけで前述のVリーグ再編後の年間運営費も賄えそうですね。

*アメリカでは高い年会費を払っているにもかかわらず選手が試合に出られなければ、その選手の実力や取り組み方、あるいはチーム状況に関係なく訴訟の対象になる恐れがあるとのことでした。

圧巻の100面コート、アメリカの全国大会

 私が帯同したジュニアチームは幸いにもラスベガスで開催される全米大会にコマを進めており、その直前にも地方大会の会場がラスベガスだったため私は1か月半の間に2回もラスベガスへ行くことになりました(思わぬ出費でした)。各クラブから前述のU-12~U18までのチームが勢ぞろいした会場は圧巻の100面コートです。日本でいう東京ビッグサイトや幕張メッセといった特大のコンベンションセンターを貸し切り、コンクリートの上に簡易のパネルコートを敷き詰めた上にネットを立てたバレーボールコートが所狭しと並べられており、そのすべてのコートで次々に試合が行われていく様はそれだけで一見に値します。さらに驚くべきはそのすべてのコートに録画用のiPadとスコア記録用の端末が備え付けれらていることです。日本のような紙媒体の記録はなくすべてデジタルで集計しています(ちなみにスコアの記録係は日本と同じように空いているチームの選手が担当していました)。100面コート(パネルコートとネット、コート周りの椅子、審判台、記録席)に100台のiPadなどなどスケールの大きさに圧倒されました。

決勝戦は会場中の特設コートでしたが、その様子はまた別の機会に
大会ごとに協賛しているデータ会社がすべてのコートの映像記録を担当、この映像をもとにデータを取り、選手が大学へ進学する際に活用される
簡易パネルコートの余り、全部で何枚かは数えるのを諦めました
記録用端末
表彰台の周りに用意された優勝メダル、一つくらいもらっても大丈夫?(ダメ絶対!)

遠征はチーム単位ではなく、家族単位で移動!?

 アメリカでは日本のように遠征時にチーム単位で行動することはありません。チームで動くのは試合の時と、チーム内で特別なアクティビティ(食事会など)を設定している場合のみです。その理由は何かあったら困るし、何かある可能性が高いからです。ジュニア世代の選手がラスベガスの街を一人で、あるいはグループであったとしても危険であることはいうまでもなく、何かしてしまう可能性もないわけではなく、そうした時に訴訟大国アメリカでは指導者には責任を負いきれないのです。移動も宿泊も家族単位、なので自由時間も家族単位です。全国大会前など大会の多いシーズンになるとチームによっては2週間に1回くらいのペースで試合のために家族旅行をしているチームもあります。時間やお金のかけ方が日本と全く違うアメリカでは、大会のための遠征でも試合だけして帰るということはありえません。むしろ観光がメインでなければ割に合わないかもしれませんね。

ホテル1階のカジノ、23時頃でもバレーボールのユニフォームを着た選手とその家族がラスベガスの街を楽しんでいました
試合会場はかの有名なべラジオホテルの近く、観光せずにはいられない!?

次回予告

 だいぶVリーグの再編計画の話題から脱線していました。次回はアメリカでのコーチ研修を経験した私の新リーグ構想と日本バレーボール界における「天下三分の計」についてお話しできればと思います。

 それではみなさんまたお会いしましょう!

 今日も、明日も、明後日も、いつでもどこでも笑顔がいいね!

 Thumbs Up Smlie代表、塚田圭裕でした。

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